特集:紅葉も楽しめる、糸島市の花・ハマボウ
花言葉は、楽しい思い出
糸島市の花であるハマボウは、主に泉川(雷山川の下流域)に自生し、7月頃、黄色い可憐な花を咲かせます。ハマボウはアオイ科の落葉低木で、ハイビスカスと同じ仲間。学名を「ハイビスカス・ハマボウ」といい、その命名者はシーボルトというから、驚きです。
(参考までに、シーボルトといえば、江戸末期、長崎にある出島に来日したドイツ人医師。その後、長崎郊外に学塾兼診療所である鳴滝塾を開校し、日本人に最新の医学を教えました。ちなみに、シーボルトの娘である楠本イネさんは、日本初の女医として知られています)
ハマボウの黄色の花はよく知られていますが、実は紅葉もきれいだといいます。
実際に紅葉を見ようと、11月4日『海辺の教室in福岡・糸島「ハマボウの紅葉」』に行ってきました。今年は暑い日々が続いたため、紅葉は11月下旬から12月にぐらいになりそうとのことですが、ハマボウの話を聞きくことができました。
現在、ハマボウは、雷山川下流(通称:泉川)沿い、加布羅(がぶら)橋から河口に向かって両岸に730本ほど群生しています。
このハマボウを管理しているのは、市民ボランティア団体『泉川ハマボウの会』。
「旧志摩町職員が、泉川のハマボウを気に入って、除草やゴミ拾いを一人ではじめました。やがて『泉川ハマボウの会』を立ち上げ、会として保全活動を行うようになりました。毎月最終日曜、夏は7時、冬は8時から草刈りやゴミ拾い。時期によっては道路側のハマボウの剪定や、ハマボウにからむカズラを取り除いています。ハマボウが咲く泉川沿いは散歩道になっているので、歩いて楽しめます。約7㎞、約2時間。泉川一帯は、生態系が豊かなので、10年ほど前までは小学校でハマボウの話や泉川一帯の生態系を話す授業なども行っていました。ここ近年は高齢化が進み、活動が継続できるか不安もあります」と話すのは、泉川ハマボウの会の扇清人さん。
扇さんのお話を聞いてから、実際に泉川沿いを歩いてみました。
ハマボウの木をよく見ると、種がたくさんなっていました。
この種は、枝を離れて水面に落ちた後、漂流し、川、そして海へと旅立っていきます。泉川は、加布里湾へと続く汽水域(淡水と海水がまじりあっている状態)。ハマボウは、塩に強く塩水で育つため、この泉川一帯に見事な群生が形成されました。11月4日、奇跡的に(?)黄色の花を見ることができました。オクラもアオイ科なので、オクラのお花にも似ていますね。センダンの実もなっています。
「ハマボウは、水面ギリギリに育ち、汽水域が大きなところに植生する特性があります。ハマボウが泉川に群生することで、魚や鳥にもいい影響をもたらすため、泉川沿いには豊かな生態系が残っているのです。泉川にはアシの群生(アシ原)が見られますが、このアシ原があることで、加布里湾のハマグリが育つんですよ。雨が降ると、山からの雨水や泥がそのまま川に入り込んでいきます。泥のヘドロ化を防いだり、雨水の栄養分などを調整してくれるのが、このアシ原。アシ原がなくなると、ハマグリも育たなくなる可能性があります」と話す九州大学生態工学研究室の清野聡子先生の話を聞いて、いかにこの泉川の環境や生態系が貴重なものであることが分かりました。
「昔、船に乗って、泉川からハマボウの花を見たこともあるんですよ」という扇さんの話を聞いて、川から愛でるハマボウは、景色や川の生態系など今までと異なる世界を見せてくれる気がしてなりません。
ハマボウは、まさに糸島市の宝ですね。この宝をこれからどう守り続けていくか。市民の憩いの場として、環境教育の場として、観光資源として。ハマボウを語り継ぐ物語は、これからも紡がれていくことでしょう(2024/11/5)。
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海辺の教室in福岡・糸島は、九州大学うみつなぎ主催。九州大学うみつなぎとは「日本財団~海と日本プロジェクト~」の一環として、福岡の海や自然をフィールドに、持続可能な循環型社会と海ごみ問題をテーマに活動するために、2020年夏に九州大学大学院工学研究院附属環境工学研究教育センターが中心となりスタートしました。
基本情報
- 開催日時
- 2024年11月5日~